ジェフリー・ダーマー

ジェフリー・ダーマー

出典

 

ジェフリー・ダーマー(1960-1994)は、被害者のゾンビ化を試みたシリアルキラーとしてよく知られています。ダーマーは医学的な知識を持っていたわけではありませんが、被害者の頭にドリルで穴をあけて塩酸を流し込むなど、独自の方法でロボトミー手術を施そうとしました。

 

生きている被害者の頭に穴をあけたと、聞いただけでもゾッとするのですが、なぜダーマーはロボトミー手術まがいのことをしたのでしょうか。

 

通常の感覚からは理解し難いのですが、ダーマーは究極のファンタジーを実現させたい思いが強く、その究極のファンタジーというのが、「被害者のゾンビ化」でした。

 

 

ゾンビ化することで何をしたかったのでしょうか。ダーマーのインタビュー動画を基に、被害者をゾンビ化したいとの願望を抱いた、ダーマーの背景にスポットを当ててみます。

 

ジェフリー・ダーマーが起こした事件の概要

 

ダーマーは、オハイオ州やウィスコンシン州で、1978年から1991年にかけて17名の青年を殺害。ヒッチハイカーやゲイバーで知り合った若者がターゲットになった。単に殺害するだけでなく、殺害後遺体を切断したり、一部を食べたりした。こうした残忍さから、ダーマーは「ミルウォーキーの食人鬼」とも呼ばれている。

 

1991年7月22日、18人目の被害者が、ダーマーのアパートを脱出したことをきっかけに、犯行が明るみになり、ダーマーは現行犯逮捕された。

 

アパートの室内には、切断された複数の頭部が残されていて、冷蔵庫の中は、被害者の臓器などがいっぱい詰まっていたという。

 

1992年2月15日、ダーマーは15件の殺人事件で有罪となり、2日後の17日に、終身刑 (936年)を言い渡された。1994年11月28日、収監先のコロンビア連邦刑務所で、シャワールームの掃除中に、囚人に暴行され、死亡した。

 

ダーマーが逮捕される直前まで住んでいたオックスフォード・アパートメント213号室は、「ザ・シュライン・オヴ・ジェフリー・ダーマー(ジェフリー・ダーマーの神殿)」と呼ばれるようになった(アパートがあった場所は、現在更地)。

 

好みの若者を完全に所有したい

ダーマーがシリアルキラーと化したのは、好みの若者を完全に所有したいという強烈な欲望からでした。

 

人種は異なるものの、ダーマーの被害者はみな若くてハンサムな青年という共通点がありました。

 

下の動画(英語)は、Inside Editionがダーマーにインタビューをしたときの様子を収録しています。その中でダーマーは、被害者を殺害するのは、「相手を永遠に所有したいから」と、はっきりと言い切っています。

 

 

 

「好みの相手と一緒にいたいなら、何も殺さなくてもいいのでは」と、普通なら考えますが、普通ではないダーマーは、そう考えることができないようです。

 

 

ダーマーの「所有したい」というのは、相手の心も含めて自分のものにしたいと言うよりも、「肉体を手元に置いておきたい」ということを意味します。

 

先程の動画のインタビューでは、自分にとって生身の人間よりも、単なる物体として相手を見るほうを好むと、淡々と語っていました。

 

人付き合いが極端に苦手なのか、相手に拒絶されたり、自分のもとを去ってしまったりするのを極度に恐れていたのかもしれませんが、相手を生身の人間として受け入れられない点に、彼の闇の部分を感じます。

 

 

ダーマーの所有欲は、犯行を重ねるごとに強まり、最終的には相手をゾンビ化するというファンタジーへと発展していきます。

 

ロボトミー手術は「完全なコントロール」を目指したから

ダーマーは所有欲とともに、相手を完全にコントロールしたいという、強烈な支配欲も持っていました。犯行を重ねるごとに2つの欲望は増大し、ロボトミー手術を施してゾンビ化するという、とんでもないファンタジーを現実化させようとします。

 

ダーマーの犯行について時系列で見ると、犯行がどんどんエスカレートしていくのがわかります。インタビューでダーマー本人が語っているように、1番目の被害者の殺害は、衝動的なものでした。その後徐々に計画的に殺人を行うようになり、睡眠薬で被害者を眠らせる⇒殺害⇒遺体の解体を繰り返すようになりました。

 

殺人がルーティンワークになると、「被害者の美しい姿を永遠に残したい」という気持ちが湧いてきて、死体の写真を撮リ始めます。写真撮影に慣れると、今度は「メモリアルとして被害者を偲びたい」と、祭壇を設置、被害者の骸骨を飾るようになりました。さらに、「性的妄想を体現したい」と、殺害した被害者を死姦し、「被害者を自分の体の一部にしたい」と、遺体の一部を食べました。

 

 

好奇心が旺盛と言うよりも、被害者が増える度に、所有欲と支配欲を増大させていったという感じです。

 

こうして膨れ上がったダーマーの欲望がたどり着いたのは、「被害者をゾンビ化させる」というファンタジーでした。

 

「ゾンビになったら、自分のもとを去ろうなどという考えを起こすことはない」一体どこをどうやったらこんな考えになるのか、理解に苦しみます。

 

被害者が生きている時にドリルで頭に穴をあけて、硫酸を流し込む。これが、ダーマーが試みた、ロボトミー手術です。

 

結局ダーマーの被害者ゾンビ化計画は失敗しますが、ロボトミー手術を試み、それを淡々とインタビューで語るダーマー。さらに、ドリルで穴をあけたり、塩酸を流し込んだりすることは、拷問ではないと言い切ります。

 

ダーマーと面談した元FBIプロファイラーのロバート・レスラー氏(1937-2013)は、ダーマーを精神病者としていましたが、本当にそうなのかもしれませんね。

 

 

ロボトミー手術はダーマーにとって夢を実現させる手段だった

シリアルキラーの殺人動機はさまざまですが、ジェフリー・ダーマーの場合、社会や相手が憎いという感情はまったくなく、ただ「所有したい」という抑えきれない欲望が、殺人へと駆り立てたようです。

 

ダーマーが描いた究極のファンタジーの根底にあったのは、「相手にそばにいて欲しい、いるだけでなく絶対服従させたい」という、異様なまでの征服欲でした。
「被害者のゾンビ化」はその願望をかなえるゴールとなり、ロボトミー手術は目的を達成する手段となりました。

 

 

インタビューでは、質問に対してできるだけ正直に答えようという姿勢が見え、ダーマーの好みのタイプでなければ、無害さも感じられました。しかし、おぞましい自分の行為を淡々と答える様子は、やはり異常な考えを持つ人間性の持ち主であることが、わかります。

 

 

相手をゾンビ化するというファンタジーを妄想したのは、相手を完全に所有したい、コントロールしたいという欲望から、というのは理解できます(共感はできませんが)。しかし、ロボトミー手術をすれば本当にゾンビになると考えるほど、ダーマーが抱いていた欲望は強烈なのかと思うと、恐ろしくなります。

 

ダーマーの死後、ダーマーの脳は科学者らによって検査されました。その結果、科学的には異常は見られなかったということです。
このことから、多くの人たちはダーマーの異様な人格は、後天的なものであると指摘していますが、育った環境や経験したことが、これほどまでに深い闇を作り出すということに、背筋が凍る思いがします。