悪名高いテッド・バンディの殺人動機は?

テッド・バンディ

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テッド・バンディ(1946-1989)は1970年代、アメリカで30人以上の女性を殺害したことでその名を轟かせた。名前はよく知られているが、バンディが殺人鬼となった動機の解釈は、分かれている。

 

有名なものは、大学時代に交際していたステファニー・ブルックスとの破局が決定づけた、という説だ。富も美貌もすべて持っていたブルックスは、バンディにとって理想の女性だった。2人は一時婚約までしたが、幼稚で冴えないバンディに、ブルックが愛想を尽かしてしまった。理想の女性に捨てられるという経験は、多少影響はあると考えられるが、ブルックスに捨てられなかったら、殺人鬼・バンディは誕生しなかっただろうか。

 

息を吐くように、次から次へと残忍な殺人を続けていることから、破局以前にその要因はあったと考えたほうが自然だ。バンディを、残忍なプレデターに突き動かしたもの。それは彼が持つ、歪んだ所有欲ではなかっただろうか。

 

盗むことは所有できること

テッド・バンディ 幼少期

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バンディは物心ついた頃から、コソ泥を繰り返すようになった。私生児として生まれ、母を姉、祖父母を実の両親として言い聞かせられながら育ったという、複雑な生い立ちが関係しているかどうかはわからない。しかし盗み癖は、覗き癖と同じようによく知られている、バンディの性癖だ。

 

特に高価なものを盗むことをバンディは好んだ。自分の境遇からは手が届かないような高級品を手にすることは、彼にとって心躍る瞬間だった。 バンディは後に、盗むことについて、「自分のものになることに喜びを感じている」と告白している:

"The big payoff for me," he said, "was actually possessing whatever it was I had stolen. I really enjoyed having something ... that I had wanted and gone out and taken."(引用
「俺にとって、(盗みで得る)大きな儲けは」 と彼(バンディ)は言った。「盗んだものは皆俺の物になるってことさ。何かを手に入れるってことは本当に楽しかったよ…欲しくなって出かける、そして持っていく、なんだからね。」

 

欲しい物を手に入れることに至福の喜びを感じるバンディの性格が、ここに表れている。この頃は手に入れるものは高級品であったが、やがてその対象は生身の女性へと移行していく。

究極の所有欲が、究極の殺人動機

テッド・バンディ 逮捕後

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30人以上の女性を殺害したバンディは、殺人に快楽を見出したシリアルキラーだ。快楽殺人を引き起こす人間は、人を殺した時に脳天をかち割られるような、強い快感を得ると言われるが、バンディも同じような感覚を味わっていたに違いない。

 

バンディの犯行の手口は、就寝中の女性を襲う、好青年の仮面をかぶって接近、拉致して暴行するなど複数あるが、殺害の過程はほとんど同じで、被害者に激しい暴行を加えた後殺害した。中には頭蓋骨が陥没したり、内臓が破裂した被害者もいた。

 

なぜこうも過剰に暴力を加えて殺害するのか。逮捕され死刑囚となったバンディが語ったところによると、被害者を暴行し殺すことは、所有することと同じだという:

Sexual assault, he said, fulfilled his need to "totally possess" his victims. At first, he killed his victims "as a matter of expediency ... to eliminate the possibility of [being] caught"; but later, murder became part of the "adventure". "The ultimate possession was, in fact, the taking of the life", he said. "And then ... the physical possession of the remains."(引用
性的暴行は、被害者を「完全に所有」するという欲求を満たしてくれた、と彼(バンディ)は言った。犯行の初期、被害者を殺したのは「好都合に過ぎなかった…捕まる可能性を排除するためだった」。しかし次第にその動機は「スリル」に変わっていく。「究極の所有ってもんは、つまり、命を奪うことだ」と彼は言った。「そして…遺体を物理的に所有するってことさ」

 

バンディにとって若く美しい女性を殺害することは、高級品を盗むことと同じく、自分のものにしたいという、飽くことのない所有欲からきていた。被害者に与える暴行の凄まじさは、バンディの激しい所有力を表現しているのではないだろうか。

 

 

 

 

遺棄現場は聖地

テッド・バンディ

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バンディは被害者を殺害した後も、暴行を繰り返していた。遺体を捨てた場所に戻り、死体を屍姦した。それだけにとどまらず、白骨化した被害者の頭蓋骨に射精することもあった。その一方で死体にメイクをしたり、髪をとかしたりもしている。いずれにしても「永遠に自分のものだから、何をしても構わない」と言うかのような扱い方だ。ここにもバンディの強い所有欲を感じる。バンディは、被害者の死体を捨てた場所に戻ることは、神秘的な領域にまで達する、強い満足感を得るためだったと、当時のFBIプロファイラー、ウィリアム・ハグマイヤーに語っている:

 

"He said that after a while, murder is not just a crime of lust or violence", Hagmaier related. "It becomes possession. They are part of you ... [the victim] becomes a part of you, and you [two] are forever one ... and the grounds where you kill them or leave them become sacred to you, and you will always be drawn back to them."(引用
「彼(バンディ)は、しばらくしてからこう言った。殺人は単に欲望や激情による犯罪のことではない」と、ハグマイヤーは説明した。「持ち物になるんだ。(被害者は俺の)一部…一部になるんだよ。そして僕らは永遠に1つになる...殺したり、死体を棄てた場所は神聖な土地になり、俺はいつも彼女(被害者)たちのもとに戻ってくるんだ」。

 

バンディはあえて「you」を使って客観的に説明しているが、自分の心境を語っていることは間違いない。病的なまでの所有欲は、おぞましい事件が起きた場所さえも、聖地に変えてしまうようだ。

 

殺人の動機は複雑で、複数の要因が重なり合って引き起こされることが多い。バンディの場合も生まれ持った性格に加え、生い立ちや環境など後天的な要素も関係している。彼が持っていた、歪んだ所有欲は、暴行と殺人を繰り返す動機を紐解く、一つの見方と言えるだろう。なぜ盗みを繰り返したのか、なぜ被害者を激しく暴行し、殺害するという残虐行為を繰り返したのかという疑問に、一つの答えを出してくれるからだ。