オウム真理教事件が結審
オウム真理教事件。
ずっと昔に起きた事件の気がしますが、、被告全員の裁判が終了したのは2018年1月29日なんですよね。
オウム真理教事件で捜査が始まったのが1995年、裁判が始まったのが1998年。
裁判から被告全員の判決が確定するまで約20年かかっています。
それにしても死刑囚が13人というのは、尋常ではありませんよね。
オウム真理教事件の中で、殺人事件に発展したのは9件です。
どんな殺人事件だったのだろう。
気になったので調べてみました。
オウム真理教事件と呼ばれる殺人事件
わかりやすいように、まずは時系列で見てみましょう。
事件発生日 | 事件名 | どんな事件? |
---|---|---|
1989年2月10日 | 男性信者殺害事件 | オウム真理教信者の男性が、他の信者に殺害された事件 |
1989年11月4日 | 坂本弁護士一家殺人事件 | オウム真理教の被害者の弁護にあたっていた弁護士一家が殺害された事件 |
1993年6月6日 | 逆さ吊り死亡事件 | オウム真理教信者の男性が、逆さ吊りの修行を強いられ死亡した事件 |
1994年1月30日 | 薬剤師リンチ殺人事件 | オウム信者を救出しようとした薬剤師が、教団幹部らに殺害された事件 |
1994年6月27日 | 松本サリン事件 | 長野県松本市でサリンが撒かれ、死者7名、負傷者600名を出した |
1994年7月10日 | 男性現役信者リンチ殺人事件 | スパイを疑われた男性信者が殺害された事件 |
1994年12月12日 | 会社員VX殺害事件 | スパイ容疑にかけられた会社員がVXで殺害された事件 |
1995年2月28日 | 公証人役場事務長逮捕監禁致死事件 | 拉致・監禁した目黒公証役場事務長を殺害した事件 |
1995年3月20日 | 地下鉄サリン事件 | 東京の地下鉄にサリンを撒き、死者12名、負傷者6,300名を出した |
以上の9件は、起訴された殺人事件ですが、オウム真理教が関与していたとみられるけれど、立件されなかった
- 在家信者死亡事件(1988年9月22日)
- 元教団仙台支部長死亡事件(1994年7月15日)
という事件が2件あります。
殺人事件だけでもこれだけの数が平生と行われていたわけですから恐ろしい。
私はオウム真理教事件をワイドショーで見て知っていますが、「こんなに事件を起こしていたっけ?!」と知らないものもありました。
どんな事件だったか、ひとつひとつ簡単ですがまとめてみました。
オウム真理教男性信者殺害事件
○被害者・・・21歳の男性信者Aさん
○おもな加害者・・・麻原彰晃、早川紀代秀、村井秀夫、岡崎一明、新実智光、大内利裕
事件のあらまし
オウム信者で岡崎の部下だったAさんは、次第に教団に対する不信感をつのらせ、それを岡崎に愚痴る。
それを聞いた岡崎が麻原に報告、Aさんを富士山独房に監禁する。
その後麻原は早川、村井、岡崎、新実、大内に脱退を希望し続けるAさん殺害を指示。
殺害されたAさんの遺体は焼却後粉砕され、敷地内に撒かれた。
立件はされませんでしたが、この事件の前に、男性信者の死亡事件がありました(在家信者死亡事件)。
Aさんはそれを知り、次第に教団のやり方に疑問を持ち始めたようです。
Aさんは脅迫にもめげず、脱退する意思を訴え続けていました。そんなAさんを口封じのために殺害した教団。
証拠隠滅のために徹底した遺体処理に冷酷さを感じます。
坂本堤弁護士一家殺害事件
○発生場所・・・神奈川県横浜市磯子区
○被害者・・・坂上堤弁護士、妻、1歳の長男
○主な加害者・・・麻原彰晃、早川紀代秀、村井秀夫、岡崎一明、新実智光、中川智正、端本悟
事件のあらまし
「オウム真理教被害者の会」を組織していた坂上堤弁護士は、オウム真理教と対立を深めていた。
教団に対して民事訴訟の準備を始めていた坂本弁護士との交渉が決裂したことで麻原は信者らに坂本弁護士の殺害を指示。
初めは坂本弁護士一人がターゲットだったが、計画変更後麻原は一家全員の殺害を指示する。
早川らは坂本弁護士の自宅に侵入し、3人を殺害、遺体を上九一色村に運んだ後、遺体を3箇所に分けて遺棄する。
当初は失踪事件として見られていたが、実行犯の一人、岡崎が自首したため、坂本一家は殺害されていたことがわかる。
さらに、その後の捜索で3人の遺体が発見される(1995年)。
事件から丸6年経ってのことだった。
自宅に教団のバッジが落ちていて、オウム真理教が疑われていましたが、決定的な証拠はなく、長らく失踪事件となっていたんですよね。
遺体もずっと見つかりませんでしたし。
一家の帰りをずっと待っていた坂本弁護士のお母さんの懸命な姿も記憶に残っています。
躊躇せず1歳の子供に手をかけ、遺体を別々の場所に遺棄する。
遺体も身元がわからないように無残に扱う。
遺体はワゴン車で上九一色村へ運ばれた。その後車3台に分け、坂本弁護士は新潟県西頸城郡名立町(現・上越市)の山中に、妻は富山県魚津市別又の林道別又僧ヶ岳線脇に、長男は長野県大町市日向山の山中に埋められた[9]。坂本弁護士の死体は歯型から身元がわからぬようにと歯をツルハシで叩きつけ、遺棄現場で景気付けに食べたカニの殻と一緒にゴミ同然に埋められた[17]。発見された坂本弁護士の頭蓋骨には大きな穴が開いていたという。(引用)
これが人間のしたことか、と、坂本弁護士一家がオウム真理教団によって殺害されたとニュースを聞いたときは、胸をえぐられるような思いがしました。
逆さ吊り死亡事件
○発生場所・・・静岡県富士宮市にあるオウム真理教富士山総本部道場
○被害者・・・25歳の男性信者Bさん
○おもな加害者・・・石井久子、大内利裕、山本まゆみ
事件のあらまし
脱退を希望していたBさんを、態度が悪いという理由で逆さ吊り修行をさせる。
Bさんは逆さ吊りにされたまま長時間放置された後死亡。
遺体は石井の部屋に運ばれた後、マイクロ波加熱装置で焼却、残った骨は薬品を使って溶かし、風呂場の排水溝に捨てられた。
通常よりも長時間逆さ吊りにされてしまったため、死亡してしまったということですが、遺体の処理がおぞましい。
どこまでも「証拠隠滅」が優先なんですね。
薬剤師リンチ殺人事件
○発生場所・・・山梨県上九一色村第6サティアン
○被害者・・・29歳の薬剤師Cさん
○おもな加害者・・・麻原彰晃、井上嘉浩、北村浩一、越川真一、後藤誠、杉本繁郎、中川智正、新実智光、松本知子、丸山美智麿、村井秀夫、元信者D
事件のあらまし
元信者で薬剤師だったCさんは、パーキンソン病を患っていた顔見知りの元信者Dの母を施設内から出そうとするが失敗、捉えられてしまう。
麻原は元信者Dに、助ける代わりにCさん殺害を指示する。
幹部らは目隠しをしてビニール袋を被し、催眠スプレーを掛けられてもがくCさんを押さえる。
元信者Dは、新実から渡されたロープでCさんの首を絞めて殺害する。
Cさんの遺体はマイクロ波焼却装置で焼却される。
事件が発覚したのは、身の危険を感じた元信者Dが、拉致される直前に警察に通報したことから。
Cさんに手をかけたのは元信者Dですが、元信者Dに殺害を指示したのが麻原。
直接自分で手をかけず、しかも解放を餌に仲間を殺害させるなんて、元信者Dの心の葛藤を楽しんでいたのでしょうか。
松本サリン事件
○発生場所・・・長野県松本市北深志の住宅街
○被害者・・・8名死亡、600人が負傷(松本市地域包括医療協議会調査による数)
○おもな加害者・・・麻原彰晃、遠藤誠一、高橋昌也、土谷正実、富樫若清夫、富田隆、中川智正、中村昇、新実智光、端本悟、林泰男、藤永孝三、村井秀夫、渡部和実
事件のあらまし
長野県松本市で、サリンが撒かれて7名が死亡、多くの負傷者が出た。
警察は当初、第1通報者だった被害者を容疑者として捜査するが、後にオウム真理教のしわざと判明。
松本サリン事件も、衝撃的でした。
まさか毒ガスがまかれるなんて、ですよね。
当時第一通報者だった河野義行さんが容疑者として疑われ、ワイドショーでもそれを裏付けるような放送がされました。
河野さんは、たまたまいろいろな薬品を持っていて、それが疑惑に拍車をかけてしまったのです。
オウムの関与も指摘されるようになりましたが、まったくの被害者である河野さんに向けられた世間の疑惑の目は、ずっと続いていました。
松本市が事件の舞台に選ばれたのは、教団と地元の間で土地の売買を巡ってトラブルがあったというのが理由のようです。
教団に不利な判決を下そうとする長野地方裁判所松本支部がはじめのターゲットでしたが、その後計画を変更、裁判官官舎のある北深志になったのでした。
麻原は新実ら教団幹部にサリンの実験も兼ねてサリン噴霧を支持したと伝えられています。
サリンの効果を確かめるための実験だっということですが、実験でなんの落ち度もない人たちを巻き込むとは。
松本サリン事件で、発生当時7名の方が亡くなりましたが、事件発生から14年後に、事件で負傷し、入院していた河野さんの妻が亡くなったため、正確な死亡者は8名となっています。
男性現役信者リンチ殺人事件
○発生場所・・・山梨県上九一色村第6サティアン
○被害者・・・27歳の男性信者Eさん
○おもな加害者・・・麻原彰晃、杉本繁郎、中村昇、新実智光、村井秀夫
事件のあらまし
1994年7月8日、温熱治療を受けていた女性信者が、やけどを負って意識不明に陥るという事故が発生する。
使っていた浴槽の水を調べると、イペリットが漏れ出していたことがわかり、村井が「教団の中にスパイがいる」と言いはじめ、調査が始まる。
タンクローリーで教団内に水を運搬していたEさんが疑われ、林によって「ナルコチェック」が実施された。
ナルコチェックとは、オウム真理教で行われた、自白剤を使ったイニシエーションのことのようです。
新実、中村、杉本は、陽性反応が出たEさんの尋問を始める。
Eさんに「体力テスト」と称してヒンズースクワット300回をさせた後、椅子座らせにベルトでEさんを固定。
自白するよう竹刀で背中を叩く、まち針を足の指に刺す、ガスバーナーで熱した火かき棒を背中に押し付けるといった拷問を加えた。
激しい拷問を受けたEさんは意識を失う。
その後麻原はEさん殺害を指示、杉本がEさんの首を絞めて殺害する。
Eさんの遺体はマイクロウェーブで焼却され、その後骨は硫酸で溶かされ川に捨てられた。
薬を使って自白させようとしたり、意識が遠のくまで拷問を加えたり。
そしてこれまでと同じように証拠を隠すために遺体を焼却する。
ここまで来ると今に始まったことではない、と思ってしまいますが、こういうことが誰にも咎められずずっと続けられていたことに恐怖を感じます。
会社員VX殺害事件
○発生場所・・・大阪府大阪市淀川区の路上
○被害者・・・28歳の会社員Fさん
○おもな加害者・・・麻原彰晃、井上嘉浩、新実智光、土谷正実、中川智正、平田悟、山形明、高橋克也
事件のあらまし
1994年、教団内で分派騒動が持ち上がる。
分派を企てているのは、大阪支部、名古屋支部を中心とした「ヴァジラの戦士」一派で、情報を受けた麻原は、在家信者の身辺調査を指示する。
そして大阪在住のFさんの名前が浮上するが
- Fさんをオウム真理教に勧誘していた担当者の中にヴァジラの戦士一派のメンバーがいた
- 柔道資格を持っていたFさんは警察署の道場に通っていた
ということから、教団分裂を煽る公安警察のスパイと決めつけられてしまう(これは全くの勘違い)。
Fさんがスパイとの報告を受けた麻原は、XVを使ってFさんを殺害するよう指示、新実ら実行犯グループは、Fさんを襲う。
山形が注射器を使ってXVをFさんにかけ、Fさんは病院に搬送されるが死亡する。
公安警察のスパイでも何でもなく、分派騒動とは全く関係のなかったFさん。
どうして命を奪われなければならなかったのでしょうか。
オウム真理教と接触したタイミングが悪かったとしか言いようがありません。
殺害に使われたVXは、サリンに並ぶ猛毒。
これを使って殺害を企てるというのも驚きですが、VXガス成功させた土谷正実は、当時教団内で「神通力」などと言われもてはやされたそうです。
この感覚がわからない…
公証人役場事務長逮捕監禁致死事件
○発生場所・・・東京都品川区上大崎の路上
○被害者・・・当時目黒公証役場事務長の男性Gさん
○おもな加害者・・・麻原彰晃、井上嘉浩、中川智正、平田悟、高橋克也、中村昇、村井秀夫、飯田エリ子、井田喜広、林郁夫、平田信、松本剛
事件のあらまし
オウム真理教徒だったGさんの妹は、教団から所有する目黒公証役場の土地と建物を布施するよう強要されたため逃げ出し、Gさんが妹を匿っていた。
妹の所在を聞き出すため、麻原から指示を受けた井上ら実行犯グループは、Gさんを拉致、上九一色村に連れて行く。
林はチオペンタールをGさんに投与し、自白を試みるが、チオペンタールを過剰に投与されたGさんは死亡してしまう。
Gさんの遺体は焼却され、骨は硝酸によって溶かされたあと、本栖湖に遺棄された。
この事件も、当時ワイドショーで連日取り上げられたので覚えています。
事件の内容を聞いたときは衝撃的でした。
普通に暮らしている一般の人が、どうして理不尽に拉致されて殺されなければならないのか。
麻原の指示を受け、信者らが実行する。
拉致後は自白を目的にして拷問が加える。
殺害後は遺体が出てこないように遺棄。
すべてが組織立てて行われているところに強い非常さを感じます。
さらに、事件に間接的に関与した信者の記憶を、電気ショックで消そうという試みがなされたことも衝撃的でした。
完全に事件をもみ消そうとの執念がすごいですよね。
地下鉄サリン事件
○発生場所・・・霞が関駅ら都内の地下鉄駅構内
○被害者・・・死者13人、負傷者約6300人
○おもな加害者・・・麻原彰晃、井上嘉浩、中川智正、高橋克也、林郁夫、新実智光、村井秀夫、土谷正実、遠藤誠一、杉本繁郎、北村浩一、佐々木香世子、外崎清隆、豊田亨、林泰男、広瀬健一、森脇佳子、横山真人
事件のあらまし
1995年3月20日午前8時ころ、地下鉄に乗った林ら実行犯は、サリン溶液が入った袋を傘の先でつついてサリンを撒く。
その後刺激臭で体調が悪くなったり、その場で倒れ込んで意識を失う人、口や鼻から血を流す人たちが続出、電車は緊急停止、パトカーや消防が出動し、現場は騒然となった
被害にあったのは
○丸ノ内線(池袋発荻窪行と荻窪発池袋行)
○日比谷線(中目黒発東武動物公園行と北千住発中目黒行)
○千代田線(我孫子発代々木上原行)
の計5列車。
事件発生当日は月曜日で、車内は通勤する人で混雑していました。
そこを狙った前代未聞の事件。
だれもサリンが撒かれたなんてわからず、ニュースを見ているこちらも、なんでこんなことが起きたのだろうと、テレビに映る現場の光景に異様さを感じていました。
ウィキペディアによれば、地下鉄サリン事件を伝えるニュースを、実行犯グループも見ていたそうです。
新実被告は、死者が出たという報道を聞き、大はしゃぎしたとか。
同じニュースを見ていて、こういう反応をしている人がいたのかと思うとゾッとします。
これまでいろいろと疑惑がささやかれていたオウム真理教ですが、ついにここまでやってしまったのか、といった感が強い事件でした。
オウム真理教事件の死刑囚
オウム真理教事件で死刑が確定したのは13人。
- 麻原彰晃
- 井上嘉浩
- 中川智正
- 新実智光
- 土谷正実
- 遠藤誠一
- 豊田亨
- 林泰男
- 広瀬健一
- 横山真人
- 岡崎一郎
- 端本悟
- 早川紀代秀
起訴された被告のすべての裁判が終わったということで、死刑執行はいつかと注目されていますが、いつ執行されるかは全くわかっていません。
わかっているのは、死刑囚の13人は現在東京拘置所に収容されているということです。
オウム真理教事件の中で、殺人事件について振り返ってみましたが、計画を変更するにも、被害者を殺害するにも、麻原の指示がすべてだったという印象を受けます。
麻原の存在が絶対だったんですね、信者にとっては。
宗教ってそういうものだけど、殺人をも自分たちの都合で肯定してしまうって。
洗脳は恐ろしいです。
普通の人が「人でなし!」と見ていることが「いいことだ」というふうに見ているわけですからね。
オウム真理教事件で起きた殺人事件は、聞けば聞くほど「もうやめて!」と、参るほど不快感が増すことばかりですよね。
でも、「ひどい」だけでは済まされないのは、悪魔のようなことも人間はしてしまうんだ、という事実を突きつけているからかも。
宗教を否定するわけではありませんが、その自由が許されるのも「人に迷惑をかけない」ということが前提にあると思いますが、どうでしょうか?
オウム真理教事件は、そんな疑問を投げかける事件だと思います。